輪廻転生の本質

昔ある所に一人の王様がいました。ある日、王様が狩りに出ると、怒りをむき出しにした母トラと三頭の子トラに追いかけられました。王様は今までの人生で経験したことのない恐怖感を持ち、逃げ出しました。

 そのとき、王様は古くて深い真っ暗な井戸に落ちてしまいました。真っ逆さまで落ちだした途中何とかして木にしがみつくことができました。その木は井戸の脇に生え、半分井戸の中に垂れ下がっていました。その枝にしがみつくき、薄暗がりの中に、その気の毒な王様はぶら下がっていました。

 上には獰猛なトラが唸りながら座り、飛び掛かる手立てを探していました。しがみついている小枝は王様の重さに耐えられずミシミシといい始めました。井戸の水の中には、ワニが王様の落ちてくるのを今か今かと口を開けて待ち構えています。

 大蛇が王様を一噛みで殺そうと、木の周りを王様に向かって動き出しました。その上、二匹のネズミがあの鋭い歯で木の根をかじり始めました。それでなくとも、その木は王様の重みでまさに折れかかろうとしているのに。

 この危険極まりないときに、井戸の上に造られたミツバチの巣から一滴の蜂蜜が落ちてきました。巣くっている毒虫が自分の血液をハチの巣に注入しており、この蜂蜜は紛れもなく毒と化していました。

 身の上に、恐ろしくも差し迫った死があるこの哀れな状況のもとで、今最後の審判が下されている王様は、舌を出して蜂蜜を味わおうとするのでした。

 

 シヴァーナンダ:これが俗世の有様です。人は気苦労、心労、苦痛、苦悩などを持ってうろたえています。この不安定な状況でも、人はまだ感覚的楽しみを持ちたがります。それが毒であるということに気づかずに。

 話に出てきたそれぞれは次のことを意味しています。木は地上を、トラと3頭のの子トラは色欲・怒り・貪り・のぼせあがりを、2匹のネズミは人生を短くする昼夜を、蛇とワニは上に行っても下に行っても死があることを示しています。このような悲惨な状態においてもこの世の人々は、王様が蜜を味わおうとしたように、楽しみを味わいたいと欲します。この地球上の楽しみは、人間の魂を破壊する紛れもない毒なのです。

 このような状況の中で王様に残された唯一の道は、至高者の保護に自分の身をゆだねることです。地球上には、多くの誘惑と困難があります。至高者に身をゆだねるのと同様に人は、「自己」実現を得るための努力をすべきです。